「礼に始まり、礼に終わる」

(社)日本空手協会では、道場に来たなら姿勢を正し礼をしてから入った後、先生・仲間に挨拶をする。その後、全員整列、正座をして黙想、心を落ち着かせ正面に礼、先生に礼、お互いに礼をしてから稽古を始める。基本や形の稽古を行う際も礼をして始め、終わったなら姿勢や呼吸を整え礼をする。厳しい修練の休憩の際も姿勢を崩してリラックスしたい欲求を抑制し、威容を正して静かに休む態度を養う。試合の場合もお互いに礼をしてから始め、終わったら勝敗に関わらず敬意感謝を込め正しく礼を交わす。そこには勝者の驕りであるガッツポーズは存在しない。稽古が終わる際も全員整列、正座をして静かに黙想、その後「道場訓」を元気に唱和して先生に礼、お互いに礼をして終了する。文字通り「礼に始まり礼に終わる」のであります。我が国の伝統文化は「礼法の実践」と言われていますが、なぜ日本人はこれ程までに「礼儀」を重視して来たのでしょうか。

それは、我々日本人が古来より抱いてきた自然や人との調和、他者への配慮、敬い合い、感謝の念など「和敬」をなにより大切にして来たからです。自己を慎み、抑制して相手を思いやり、暖かい間柄を維持して、すべての関係を円滑にする。その心の表われが「礼儀」であり、美しい立ち振舞い、たしなみとして日常生活にも体現されるのです。現在、多く見受けられる「無躾」「無礼」「失礼」「非礼」「行儀の悪い」態度は相手に対して不快感を与えるだけではなく、自らの品位を傷つけると共に不徳を招くことになります。

「礼儀」とは人と人とを結ぶ人間愛であると共に究極の「護身法」なのであります。